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【読書メモ】ニック・ランド「暗黒の啓蒙書」を読みました

ニック・ランド「暗黒の啓蒙書」を読みました。

 

少し前に、現代思想の加速主義特集を読んで、木澤佐登志「ニック・ランドと新反動主義」を読んでいて、そのうち読もうかな~~と思っていたら、Kindleのポイント50%還元セール対象になっていたので読みました。

 

 

 

 

 

 

 

 

内容については、先述の二冊の本の中で大きく触れられていたのである程度知っていましたが、現代リベラリズムと西洋的民主主義の欺瞞性を喝破して、新たな出口への離脱を、熱に浮かされたような文調でアジテートする内容。

ぼく自身、2021年頃に自分自身の思想を意図的にリベラル寄りに修正する、という事をしていましたが、逆に言えば、ぼく自身は本来全然リベラル的な人間ではないので、「持っていかれ」ないように一歩引きながら読んでいました。読んでいる感覚としては、ニーチェの著作を読む時のそれと近かったです(ニーチェを読む時も、「持っていかれ」ないようにするような意識で読んでいるので)

そんな読み方を必要がある、という事は、魅力的に感じた部分もあったという事で、というより全体として興味深くはあったのですが、根本な所では「何言ってんだ……?!」というカンジの事を思いながら読んでいました。

一番大きく覚えた違和感が、ニック・ランドが使っている民主主義という言葉が、(特にアメリカをターゲットとして置いた)現代的な議会制民主主義だけを対象としていた事でした。途中、デヴィット・グレーバーの民主主義に対する発言が引用されている場面がありますが、グレーバーは、「(本来の)民主主義」は、現代的な議会制民主主義ではなく、もっとアナキズムに近いものとして認識しているのでは? 現代の議会制民主主義の腐敗を喝破し、そのオルタナティヴを目指すにしても、もっと違った形での民主主義という出口があるのでは……?と、ぼくは思っています(ぼく自身、特に日本における現在の議会制民主主義体制の破壊を望んでいるので)

 

本書自体、反ポリコレ・反リベラル・反民主主義的な扇動を意図したウェブログ文書ですが、本書の訳者自身も、本書の内容に対してクソ煽ったような内容の文章を訳者あとがきに載せていたのが面白くて笑ってしまいました。

 

 

本書と同じように、「現代政治に対するある種の絶望への対処方法を模索するために書かれたの啓蒙書」という意味では、少し前に早川書房から新板が発売された、ジョセフ・ヒースの「啓蒙思想2.0」はオススメです。