トモエブログ

きぐるみハードコア

【読んだ本】大谷崇「生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想」

最近、シオランの本を何冊か読んでいるので、改めて、入門書でも読むか~~という気持ちで読みました。

 

正直言って、「生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミストシオランの思想」だなんて洒落臭いタイトルの本は読みたくないぜ、という気持ちは少なくなかったのですが、ひとまず初学者が手に取るには適当な本だろう、という思いで読みました。

こんな洒落臭いタイトルの本は読みたくないぜ~~~、と思いながら読んでいたら、著者のあとがきで、

 

最後に、本書のタイトルについて。私は本についてはタイトルさえ素晴らしければ、あとは内容などどうでもいいと思ってしまいがちだ(シオランもその傾向がある)。そういう意味では、本書のタイトルは、決して私の本意ではない。本を出すこと、そして売れること読まれることと品位のバランスの問題は、本当に難しい。本を出し続けたシオランのことをさんざんああだこうだ言い、そして文庫化を望んだシオランの弱さをあげつらっておいて、まさか自分が似たような状況に陥るとは思わなかった。シオランも言っているとおり、「恥知らずにも限度がある」。ただ、結果として、彼のことをよりよく理解できた気がする。

 

大谷崇「生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミストシオランの思想」

 

と書かれていて、面白くて笑ってしまいました。

 

そんな事は、まあ、本の内容とは直接関係無いので、本書の内容について。

 

思想家シオランの生涯や、その思想について分かりやすく解説されていて、入門書としてとても適当(ある条件・目的・要求などに、うまくあてはまること)で良かったです。それと、先述したあとがきでの部分などもそうなのですが、著者自身が、シオランを一般向けの通俗的な教養書・実用書において語るという事に対する葛藤や自己矛盾的なものを抱えながら文章を書いている部分が多かったのが面白かったです。

 

ぼくはシオランについてはほとんど初学者なので、シオランについて知らなかった事や、最低限知っておいた方が良いだろう物事を多く知れて良かったです。

宗教学者ミルチャ・エリアーデとの交友関係などは、へ~~っと思いました)

 

とはいえ、本書が、シオランの魅力について詰め込まれた本であるかというと、それは微妙な所だな、とも思います。

 

ぼくの話をします。

ぼくは、とても心身共に健康であり、自分自身が健康である事を日々自覚しながら生活をしています。また、自分自身が全人類の中で上位0.1%程度に入るほどに幸福な生活を送っているという自覚を持ちながら日々生活を送っています。

言ってしまえば、シオランの思想や人生とは真逆とも言えるような人間である、という自覚があります。

そんな自分が、どうしてシオランを読んで、改めて入門書を読んでみようかと思っているかというと、「シオランの文を読むのが楽しいから」です(翻訳を通した上で、とはいえ)。

シオランを読むきっかけになったのは、(とてもミーハーで恥ずかしくはありますが)現代思想の反出生主義特集の巻などがきっかけで、その後に新装版が刊行された「生誕の災厄」を読みました。

 

ぼくは元々ニーチェの本を読むのが好きという事もあり、明らかにニーチェの影響下にあるアフォリズム形式で綴られ、なおかつニーチェとは対極的で悲観的な思想が、面白いなと思いました。そして何より、書かれる文がめちゃ格好良くて、読むのが楽しい。大げさな事を言えば、官能的でもありました。

(ちなみに、今まで読んだシオランの著作の中でのぼくのお気に入りは、「悪しき造物主」です。(ぼくは、グノーシス主義思想にかぶれているので))

 

そんな、シオランの書く文を読む楽しさ、というものが、本書で始めてシオランの事を知った読者に伝わるかは微妙な所かもしれない、と思いました。

とはいえ、たとえシオランの事を知らなくても、シオランの本を読みたくなるような本ではあるので、大した問題でも無いだろうな、という感じはします。

 

かく言うぼくも、本書内で繰り返し引用されている、シオラン最初のヒット作でもある「崩壊概論」の事をとても読みたいと思いました。

 

思いましたが……古書しか無い上に高い……(八千~一万円)っ、それと、カイエも、いつか一通り著作を読み終えた後くらいに読もうと思っていましたが、手に入れようと思ったら三万円……っ……っ……!

 

仕方がないので、図書館で借りて読みたいと思います。

(と、思ったら崩壊概論の方は手軽に借りられる市の図書館ネットワーク上の在庫には無い~~……どこかの大学の図書館で借りるか~~……?)

 

(終わり)