トモエブログ

きぐるみハードコア

自作曲の解説と関連書籍:「KIGAnon」

ぼくは、

「自分が作ったものに対して、作者が自分で解説をする行為は、ナシなのではないか」

という価値観を持っていました。

この価値観が自分の中で強まったきっかけは、2013年頃、ぼくが当時観ていたテレビアニメ、ドキドキプリキュアプリティーリズムレインボーライブという二作品において、それぞれシリーズ構成と監督がTwitter上で色々な設定だったり、解説だったりをしているのが嫌だった、という事なのですが、思い返してみると、自分が嫌だったのは「解説」の部分ではなくて、「Twitter上で」の部分だったな、とも思うので、こうして、ブログという形式であれば、まあ、良いか、という思いもあり、また、2020年代、インターネットで何か表現活動をする上で、説明をしてしすぎる事は無いのではないかという考えにもなってきたので、自分で作ったものに対して、自分自身で解説をします。

 

・「KIGAnon」

最近、TOMOE KIG名義で「KIGAnon」という曲を作りました。

 

 

t.co

キグアノンというタイトルの通り、所謂Qアノン的陰謀論をテーマにした曲です。

「何らかの事情通だったり、探偵のような存在が、主にリベラル的な勢力や集団の悪事を、虚構の証拠を積み上げる事によって謎解きゲームのように暴いていく」という、インターネットで流行り続けている一大エンターテイメントに対するぼく自身の憂いが込められています。

 

ぼくは、半年ほど前からTwitterに対する気持ちの糸が完全に切れてしまって、そのきっかけというのが、直接的な言及をしてしまえば、「暇空茜みてーなやつがこんなに支持を集めて、発言力を持ってるSNSなんかやってらんねぇ」という事です。

陰謀論と扇動、といえば、本邦では10年代にも「余命三年時事日記」といった事件も起こっていましたが、それと同じような流れが、より大規模かつ「普通の人」をより巻き込む形で展開している様を見せつけられて、非常に、「てめーらマジで良い加減にしろよ」というような心地でした。

 

そんなわけで、以下が歌詞です。

 

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匿名KIG
告知真理
混沌七竅
KIGURUMI梱包

匿名KIG
白兎追跡
点星結合
星座形成

欺瞞偽善GAOマスク剥奪
不正巨悪蔓延ナニカ暗躍
義憤闘志通し繋がる同志
星と星繋ぎ輝くFACTION

欺瞞偽善GAOマスク剥奪
不正巨悪蔓延ナニカ暗躍
義憤闘志通し繋がる同志
星と星繋ぎ輝くFACTION

欺瞞偽善GAOマスク剥奪
不正巨悪蔓延ナニカ暗躍
義憤闘志通し繋がる同志
星と星繋ぎ輝くFICTION

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「混沌七竅
KIGURUMI梱包」

というのは、荘子の「混沌」のエピソードを元にしています。

「混沌」の死体をKIGURUMIに詰めるイメージです(?)

MVの中で錠剤を服用している部分は、「赤いピル」を服用している場面です(「赤いピル」というキーワードは、マトリックスが元ネタの陰謀論頻出ワードです)。ちなみに撮影に使ったこの錠剤が何かといえば、マレフェMtFです。

「白兎追跡」は、Qアノン的陰謀論のお決まりワード「白ウサギを追え」が元ネタです。

歌詞の中の「星座」だとか「星と星繋ぎ」の部分の元ネタは、山口貴由せんせいの「劇光仮面」……も元ネタですが、どちらかと言えば、タミム・アンサーリー「世界史の発明(The Invention of Yesterday)」です。どちらにせよ、人々が物語を紡ぐ事を、夜空の星と星を繋いで星座を描く事に例える事は共通しています。

 

 

人々が現実を物語として受け取る事の危険性、という意味では、少し前に読んだ「THE STORY PARADOX」も元ネタかもしれません。

 

曲の構成としては、序盤のBPM160弱のダウンピッキングリフは、「何か落ち着いた雰囲気の事情通な奴が、何か、重大な欺瞞を暴こうとしているぞ」というような気分を表現しています。

その後、ある程度のまとまりを持っていた運動が、時を経る度に徐々に加速し、暴走して破綻に至り、その後にはまた同じような語り手が……という事を描いています。

 

結局の所、この曲を通して何が言いたいかというと、「世界の混沌性を認めて、現実の物事に対して、極力、分かりやすさや物語性を見出さない」という心持ちでいきましょうよ、という事です。

 

(おわり)