「自分は『プリキュアシリーズ』が好きだったんだ」という錯覚を覚えてしまった……!(映画 プリキュアオールスターズFを観ました)
ぼくは、「プリキュアシリーズ」というものが好きな人間ではありません。
ぼくは、「xx(IP名)シリーズが好き」という形式での「好き」という感情全般に対して、強い疑念を抱いている人間です。
ハッキリ言ってしまえば、そういった「好き」の感情は、「自分はxxシリーズが好きな人間」だというアイデンティティを保持するための、ニセモノの「好き」に過ぎないのではないか、とすら思っています。
また、各々違った作品を一つの「シリーズ」としてまとめる行為は、創作された作品世界を、IP(商品)として見るような感じがして嫌だな、という気分があります。
(こういった思想が自分の中で強くなったのは、作品としての「ガンダム」に好きな作品は多くあれど、IPとしての「ガンダム」を長い間憎み続けているからだという自覚があります)
なので、「好きなプリキュア作品」は複数あり、おおむね毎年全話を追いかけてはいますが、ぼくは「プリキュアシリーズが好き」な人間では決してありません。
(本当は「プリキュアシリーズ」に対してはもっと悪感情を抱いているですが、本筋と外れるので今回は書きません)
とはいえ、ぼく自身、プリキュアのTVシリーズを観続けているのは「プリキュア(作品)」が好きというよりも「プリキュアを観る行為」が好きという、いわば惰性的というか、純ではない消費の仕方をしているなとも感じています。
そんな諸々の気持ちを抱きつつ、9/16(土)、朝一の回から、映画プリキュアオールスターズFを観に行きました。
ぼくはスイートプリキュア♪以来の田中裕太かんとくのファンなので、どちらかといえば、「タナカリオンかんとくの映画を観に行く」というモチベーションが強かったのですが、前々日夜(最速上映)終了後のTwitter上の様子などで、なんとなく、何か、只事ではない事が起きているような事が伝わってきた事もあり、観始める前から、ハードルが上がっていた状態でした。
以下、映画の内容に言及。
タナカリオンかんとくのプリキュア映画、登場人物の名前の出方が一昔前のエロゲみたいで好きだな、と思ったり、「はらペコった~~!」からタイトルがバンと出る感じに「劇場版ドラえもん?!」となったりもしつつ、田中かんとくお得意の観ていて気持ちが良い戦闘シーンが続く冒頭。
ドラゴンボールやワンピースの映画(あるいは、ダイの大冒険の気合の入った回)なんかもそうですけど、東映アニメーション作画のバリ気合入ったアクション、めちゃ気持ちが良い~~~&たまには、スイートプリキュア♪の時みたいに、思い切りリミテッドな環境でのタナカリオンかんとくの各話演出回が観たいな~~、などと思いながらの序盤。
なんだかんだで3チームに別れ、ところどころ不穏な要素を見せながらも、穏やかに進む旅路。
行程での衛生状態だったり、このシュプリームって人、一人だけ私服めちゃ可愛くない?! いや、服可愛いでしょ……!と思ったりしつつ、各チームが同じ場所へ揃ったりする中盤辺りで、「いや、そろそろ他のプリキュア達、出てこないのか……?」などと思っているうちに、過去の回想。
地面に打ち倒されて動かないミルキィローズという絵面がとても衝撃的で、えっ……?あれだけ強い、ミルキィローズが……?!
そんな風に戸惑っていたら、次々と続く敗北シーン。
エッ……?!
これ、みんな、死んでんの……?!
いや、マジか~~~~、それと、弱者と悪者、それを倒す正義の味方ごっこ(メタでしょ!)を演じるシュプリームさん。
いや、シュプリームさん、私服もそうだけど、その衣装、それから姿かたち、めちゃ可愛いでしょ……!(その姿になってみたかったの?!)という所に萌え(死語)を感じたり、敵対後に肌の色が変わる描写、怒られないかな……といった事を考えたりしました。
そんなこんなで、プーカ(めちゃ可愛存在被造物)による反逆。
被造物による創造主への反逆というテーマは、個人的に好きなポイントでもあります(グノーシス主義者なので)。
一度再構成された世界が再度分離された後、皆のプリキュアの記憶によって、消滅したはずのプリキュア達が蘇っていく展開。
いや、こ、こんなのズルでしょ~~~~!!!
少し前のライダー映画でもありましたけど、こんな事をやられると、一気に感情を持っていかれるんですよ。あくまで物語の傍観者としての存在だった自分自身が、突然、物語の最前線に立たされるワケなので、それも当然なのですが、いや、ズル、ズルでしょ~~~~っ!
などと思っていたら、ぼくの記憶を通じてプリキュア達が蘇るだけではなく、戦闘時のレスバトルパートで、蘇ったプリキュア達のかつての名シーンだったり、台詞だったりを、一々的確な文脈で引用して揺さぶりをかけてくる~~~っ?!
この辺りの、「過去作の文脈を使った情報圧縮による過去作視聴済観客特効攻撃」は、KING OF PRISM(アニメ映画)と似た感覚を覚えたりもしました。
ぼく、HUGっと!プリキュアに対しては色々と思うこともあるのですが、キュアエールさんの応援→キュアモフルン等々の描写→プーカのプリキュア化の流れなんか、とてもグッと来てしまいました(HUGっと!におけるプリキュアという存在は、自己実現の象徴)
あと、あ~~、満と薫……!いや、満と薫って文字列を打っているだけで泣けてくる……いや、映画だとかを観て、感情が動いた結果として涙が出る事に関して、ぼく自身はせいぜい生理現象にすぎないと思っていて、特別大きな価値を置いてはいないのですが、この辺りではもうずっと泣いているので、まあ、そんな事はどうでも良いんですが……(混乱)。
過去描写関連とは別でぼくがグッと来たのは、キュアウィングくんが言った、「僕たちを忘れないで」といった旨の台詞です。
いや、弱いんですよ、ぼく、こういう、フィクションの登場人物が観客へ願いを投げかける台詞に。
ぼくが「思い出しただけでほぼ確実に涙が出てくるアニメの最終回のシーン」というのが二つあって(まあ、涙が出る事自体は大した事ではないのですが)、その一つが、明日のナージャの最終回のローズマリーの台詞で、もう一つが、ジュエルペットハッピネスのルビーの台詞なんですよ。
「ルビー達の事、忘れないでね。大人になって、他に楽しいこといっぱい見つけても、お仕事するようになって毎日疲れちゃっても、結婚してお母さんになったとしても、ルビーの事忘れないで!」
って台詞を、シリーズ最終作(厳密には最終作ではありませんが)の最終回に、シリーズを通しておちゃらけて(いるシリーズが多く)、主役を張ってきたルビーが、そんな視聴者へ向けた願いのような台詞を言うのが、まあ、xxシリーズなんてくくりはどうでも良いと思っているのですが、もう、思い出すだけでもうわ~~~、泣けてくる~~~~、ってカンジなんですよ。
一つ一つの細かい描写を拾っていけば他にもいくらでも言う事はあるのですが、とにかく、ぼくがこの映画を観終わって一番に思った事が、「プリキュアシリーズが好きで良かった~~!」という事です。その次に思った事が、「「自分はプリキュアシリーズが好きだったんだ」という錯覚を覚えてしまった……!」という事なのですが、この二つの、あるいはこの記事中に散在する諸々の矛盾した感情は、それぞれ矛盾しながらもぼくの中で確かにダブルシンク的に両立しているものです。
うお~~~、それと、シュプリームとプーカの関係、めちゃ個人的にツボです。
創造主と被造物という関係でありながら、自己と、もう一人向き合える対等な他者という関係性を築いているのが、めちゃ良いです。あと繰り返しになりますが、シュプリームが自分の意志であんな可愛い姿かたちになって、あんな可愛いマスコットを作っているのも、性別不詳って所も良いですね。一人遊びをやっているのもシンパシーが湧きますし、いや、シュプリーム……さん……好き……
(おわり)