少し前に読んだ、同著者の「失敗の科学」「多様性の科学」が面白かったので、読みました。
著者のマシュー・サイドが、イギリス卓球界の元トップ選手だったという事は、本書を読んで初めて知り&この本自体が、著者の処女作だったという事は、今さっき知りました。
本書の主な主張としては、
「世間において「才能」というものが過大評価されており、傑出した個人が持っている能力とは、周囲の環境からの影響や、効果的な練習・訓練によって獲得されたものである」
「才能至上主義は、個人や団体から変化への動機を奪ってしまう」
「生まれ持った才能に依らず、どんな人間であっても、効果的な練習や訓練を通して傑出性への道を歩める可能性がある」
といったものです。
ぼくは、荀子の勧学篇冒頭にある「青は之を藍より取れども、藍よりも青し」という言葉を座右の銘の一つとしています。
この言葉は、何故か一般的に「弟子が師匠を超る事の例え」というような意味で使われていますが、この例えは、人間が後天的な努力によって、それまでの自分自身よりも優れた何かに変わる事が出来る、という事の例えです。
儒学者らしく、社会における階級的な上下関係や差別は許容しつつも、君子も小人も本来的にはあまり変わる所は無く、その違いは後天的な努力の差にある、というのが、性悪説で知られる荀子の根底にある思想です。
「実力も運のうち」的な議論などは一応承知の上で、ぼく自身、そういった思想を持っています。
そのため、本書を読んで、自分自身の思想が強化されたな、という感じがしました。
ぼくは、なんらかの本を読んで、「自分自身の思想が強化されたな」という思いを抱く時は、同時に、「それで良いのか?」「自分自身の思想と合っているからといって、無批判になっていないか?」という危惧も抱きますが、ひとまず、なんだかんだ自分は今まで、あまり地道な努力というものを真面目にしてこなかった人間なので、まだ決めていない今年の目標は、「地道」だとか、そういったものにしようかな、と思いました(「加速」を目標として全く加速できなかった昨年度の反省もありつつ)。
「驥は一日にして千里なるも、駑馬も十駕すれば之に及ぶ」というような気持ちで、今年はやっていきたいです。
(最近、なるべく頻繁にブログを書こうとしているのも、その目標の一環です)